この1年の変化(学会出張がなくなって気がついたこと)

ちょうど書こうと思っていたこと(「#この1年の変化 」)がはてなのお題キャンペーンになっていたので、乗っかってみる。

 

大学で勤務するCS系研究者の立場で、1年の変化についてふりかえってみると、目に見える大きな変化は「学会出張に行かなくなったこと」だと思う。同業者で時々話題になるのは、学会に行っておしゃべりする機会がなくなってしまったということ。もっとも自分の場合、ある一定の年齢になってからは学会のバンケットで積極的に人脈を広げたりすることもせず(そもそも知り合い同士でも夕食に3時間もかけるのは苦痛)、休憩時間では部屋に籠もって締切作業に勤しんでいたくらいなので、その点は実は大して変化していないように思う。そもそも単独で行動したり、テキストで会話する方が居心地が良いのである。

 

出張に行かなくなったことで大きいのは、物理的な移動がなくなったことで、これでかなり時間が捻出できたように思う。海外出張の場合、時差ボケになる心配もない。それまでは平日5日間が消費される出張を国内外あわせて年間6-7回はくりかえしていたけど、これは単純計算で6-7週間相当。1週間で10回の研究ミーティングをやるとして、60-70回のミーティングに相当するのだから、この差は大きい。そんなわけで、この1年間は学生との研究ミーティング回数が大幅に増えた。また、研究費支出として旅費の項目がなくなったので、その分をRA経費として熱心な学生に研究を頑張ってもらうことにした。出張にかかる事務作業もなくなったので(考えてみると、毎度結構面倒な処理が発生していた)、その時間も有効活用できる。これはなんか良いこと尽くめではないか!

 

最近は国際会議もオンラインで参加できるようになっているのだけど、欧米開催のことが多いので、時差の問題があった。日本だと真夜中に参加することになるので、一人時差ボケのような状態になってしまう。自分の場合は眠気に対抗することなく、深夜1時くらいまでか、早朝5時くらいからの参加のどちらかに絞り、本当の真夜中に起きて参加することはしなかった(後から動画も見れるし)。しかしここにきて、アジア時間で会議を再演してくれる(著者らは真夜中にもう1度発表)というありがたい会議が出てきているので、時代はそういう流れなのかもしれない。これがあれば、リアルな出張の必要性がなくなる。もっとも出張先で美味しいものが食べられなくなってしまうけど、純粋に会議を堪能するならその方が良いように思う。時間もお金も体力も節約できるのだから。

 

研究者として飯を食うようになって早くも20年になる。これまでずっと生活の一部であった「学会出張」がなくなることはまったく想像だにしていなかったし、それなしには研究が成り立たないように思っていたけど、実際は違っていた。下手に出張しない方が研究が捗るのである。実際、世界のトップを走る研究グループのPIなんかは、あまり会議でも見かけない(委員として働いていない限り)。まぁそういうことなんだと思う。出張の非効率さには薄々気がついてはいたのだけど、学会出張は半ば習慣のようになっているため、何の疑問もなく長らく参加し続けている状況にあった(毎年の研究予算にも必ず旅費を計上していたくらいなので)。コロナ禍で学会出張を強制的にやめざるを得ない状態となり、新たな価値観に気がつくことができた。この先、少しずつ元の生活に戻ると思うのだけど、出張しないことのメリットを体感してしまった今、学会出張に行く回数は元に戻らないと思う(ゼロではないにしても少ないはず)。もっとも、学生や若い研究者には積極的に学会出張を経験してもらいたいと思う。

 

国内でも海外でも色々な土地に行くこと自体はとても好きなので、学会出張しなくなった分の時間で働いて、その分休暇をとってどんどん個人旅行に行こうと思っている。学会出張だと遊べないし、とことん楽しむならその方が効率が良い。