論文の締め切りと dip

すっかり論文出したら書く日記化してますが、今回もようやく終わりました。今週は2本だったのですが、どちらも一度リジェクトされた後の再投稿なのでスクラッチからやるよりは楽だったのですが、そうはいってもストーリーの大幅な修正をしたり、新たな実験の計画を立ててそれを実行した結果を追加したりしてたので結構大変でした。1本はUSの先生との共著だったのですが、今回も本当に感心することしきりでした。もう十分に練れていると思える表現を本当の最後の最後まで拘って直すんですよね。それがまたうまくて、地力の差をまざまざと感じさせられてしまいます。同じ結果を見せるのでも、うまく効果的に見せた方がやはり良い事が多いのは紛れもない事実だと思います。論文にせよ、上司へのプレゼンにせよ、外部競争資金をとるための資料にせよ、うまい方法でアピールするにこしたことはありません。このあたりが出来るようになるにはとにかく修行を積むしかないでしょうね。

ところで上で書いたように最近は競争が激しい良い会議にしか出していないので結構な勢いでリジェクトされていますが(採録率17%というのはやはり厳しかったです)、この路線はまだまだ続けてみようと思っています。少なくとも今日出した論文は良いネタである確信がありますし、リジェクトされた論文も質の良い査読結果を元に修正し続けていけば必ず良いところに通るのではないかと思います。結果が出るまでは辛いですけどね。また来月末にも締め切りがあるので、それに向けてまた没頭しようと思います。リジェクトの嵐にめげて妥協しないためにもどんどん新しいことをやって自分のを盛り上げないと駄目ですね。

ところで最近読んだ本で Seth Godin の the dip というのがあるのですが、論文を良いところに通して行く上ではこの本でいうところの dip を超えることが必要だと思います。dip の行き着く先が袋小路(cul-de-sac)だったらすぐにその dip から離れればいいのですが、現在取り組んでいる論文をトップカンファレンスに通すという dip の先には色々な可能性があると思いますので、もう少しdipの中でもがく価値はあると思います。dipを越えることで得られる価値の中で最も大きいのは他の人は簡単にのぼってこれないので、そこに到達できた人のみが得られる大きなメリットがあるということです(2:8の法則でいうところの2割側になるアナロジー)。医師免許をとるというのも dip を越える例のひとつといえます。dip の話はキャリアの話としてもとらえることはできますが、ひとつひとつの研究ネタもこの考えで管理すると良いのじゃないかと思います。行き先が袋小路であることが明らかな研究であればすぐに止めてしまうべきですし、そうでなく可能性があるのであれば、短期的な痛みに耐えかねて dip の途中で止めてしまうほど無駄な事はありませんので、なんとしてでも頑張るべきです。そのためにも他の無駄な活動は止めて大事なものに時間を割きましょう、というようなことが書いてあります。
それでも駄目だったら・・・それはまぁその時になってから考えればいいかなと思います。今はまだ dip の中ですので。

ちなみにこの本は下記の記事で知って即買いしたのですが、とても良いです。ページ数が少ないのも良いです。
http://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/spirit_osm_vol8.html
http://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/spirit_osm_vol2.html

関連して下記は論文力をつけるという話です。こちらも島岡さんのブログより。それにしても50稿というのはすごいです...今日出した論文は svn のrevision数的には300超えていますが、ほとんどがマイナーチェンジですからね。
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-241.html

The Dip: A Little Book That Teaches You When to Quit (and When to Stick)

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