扁桃腺切除手術 Day 1

いつかはこのような文書を書く日が来るかもしれないと思ってはや15年くらい。ついにこの日が来たので記録に残しておこう。

手術に踏み切った経緯

昔から部活で運動をし過ぎたり、試験の前などに徹夜をする日が続くと、決まって扁桃腺を腫らせて高熱を出し、1週間近く寝込むようなことが続いていた。
とくに社会人になってからは、「締め切りもの」の前に無理をすると、締め切りの終わりとともに、あるいは下手すると締め切り前に高熱を出すのが風物詩のようになっていた。昔は扁桃腺の悪さは大人になれば自然と収まる、というようなことも聞いていたのだけど、自分の場合は収まるどころか、不惑を過ぎてからは本当にちょっとしたことでも扁桃腺が腫れるようになった。まさに「腫れ物」である。

長年の経験から、どういうときに扁桃腺が腫れるか、腫れたらどうすれば治るかは身をもって理解できている。
あらかじめ予防をしたり、おかしいと感じたらすぐに睡眠を多めにとったり、アルコールを控えたり、早めに耳鼻科にいって抗生物質を飲むことで凌ぐような対処法が身についた。どこの医者にいけばロキソニントランサミン抗生物質を多めに処方してくれるか、といった情報は熟知しているし、来週に海外出張があるので念のために多めに処方してほしい、とか言えば多めに出してもらえるライフハックも編み出した(あながち嘘でもないのだけど)。
それでも2016年の末から2017年のGW頃にかけて、本当に毎週のように熱を出してしまう不毛の時期が続いた。そのたびに抗生物質を飲んでなんとかしていたのだけど、いくらなんでも薬を飲み過ぎであると思うし、何より仕事にならないばかりか家族にも大きな迷惑をかける。かかりつけの耳鼻科の医師に相談したら十分に手術の適用であるので、切ったら?と言われた(前からよく言われていたのだけど)。

とにかくいざという時に寝込んでしまって力が出ないのは困るし、論文を書いて飯を食っている身としては、共著者に迷惑をかけることがこの上なく申し訳ない。もっと全力で論文を書く時間を増やしたい。そして家族にも迷惑をかけたくない。土日に寝込んで子供と遊ぶ約束を反故にしてしまったことも数知れず、後悔することしきりである。そこで意を決して扁桃腺切除手術に踏み切ることにした。いざ決意をした上で手術についてネットで調べてみると、痛み、味覚障害変声、違和感等、色々と副作用もあるようなのだけど、自分としてはとにかく高熱を出さないメリットが大きく感じられるので、決意が揺らぐことはなかった。ただ、そう決意してからはなぜか扁桃腺が腫れることはなく、この冬シーズンも一度も高熱が出ることなく、乗り切ってしまった。このままいけるのなら手術しなくても良いのでは?そんな風に考えたりもしたのだが、以前にもそういう調子が良い時期があった後、調子が悪くなったことを思い出す。調子が良い時期が過ぎてしまえばまた元の木阿弥であろう。やはりこの機運を逃してはいけないのだと思う。

今回の手術の経過を自身で観察し、記録に残しておこうと思い立った。少なくとも入院中は締切もないから時間は十分にとれるだろう。もっとも明日に手術が終わったら激痛で日記を書くどころではないのかもしれないけど。
「手術体験日記」という意味では、3年前に胆嚢を切除したときの顛末も日記に残しておけばよかったなぁと思う。詳細はほとんど忘れてしまった。胆嚢切除手術に関して自分としての結論を言えば、手術してものすごく良かった。理由は単純明快で、酒を飲んだ日の夜中に胆石が動くことで生じる疝痛の恐怖に怯えることなく、心ゆくまで鯨飲できるから。副作用もとくにない。なお、胆嚢を切って出てきたのはパチンコ玉を少し大きくしたようなサイズの胆石だった。最初は怪しく黒光りしていたのが今ではすっかり白茶けて、ジャミラの肌のようになっている。そしてオフィスの書棚に「お守り」のように鎮座している。

Day 1

14時に入院手続きを済ませた他は、まぁ基本的に暇である。看護師の方や、麻酔の先生、執刀する先生が入れ代わり立ち代わり来る以外はPCに向かって作業をしたり、この日記を書いたりしている。夜21時以降は飲食禁止である他は、特に制限もない。差額ベッド代を払うまでもないと思い大部屋希望だったのだけど、運良く満室ということで初日は個室を割り当ててもらったので、キーボードの打鍵音を気にせず作業ができる。
18時少し前に質素な夕食が出た。10分足らずで食べてしまい、18:40現在もう腹が減っている。明日から喉の痛みで食べられなくなるだろうに、大丈夫なのか不安である。