シュレッダーのすすめ

とあるところで、Richard Hamming による講義の transcript の情報が回ってきました。
http://magic.aladdin.cs.cmu.edu/wp-uploads/hamming.pdf

Dr. Hammingの業績は数あるのですが、私はフーリエ変換をする際に元データに対して適用するハミング窓関数でお世話になっていました。正直に言うと通信の分野の末席に身を置かせていただいているにも関わらずハミングコードの中身をよく知らなかったりするのですが・・・。

それでその上記の transcript はまだ全部は読み終えていないのですが、Q & A のところで面白い一節がありました。詳細は略しますが、以下のようなハミングの言葉があります。

You have to change. You get tired after a while; you use up your originality in one field. You need to get something nearby. I’m not saying that you shift from music to theoretical physics to English literature; I mean within your field you should shift areas so that you don’t go stale. You couldn’t get away with forcing a change every seven years, but if you could, I would require a condition for doing research, being that you will change your field of research every seven years with a reasonable definition of what it means, or at the end of 10 years, management has the right to compel you to change. I would insist on a change because I’m serious. What happens to the old fellows is that they get a technique going; they keep on using it. They were marching in that direction which was right then, but the world changes. There’s the new direction; but the old fellows are still marching in their former direction.

拙訳

変化することが必要です。しばらくもしたら疲れ切ってしまい、そしてその分野での自分のオリジナリティを使い切ってしまうでしょう。近くで何かをみつけなくてはいけません。音楽から理論物理、そして英文学にシフトしろと言っているわけではありません。ある分野の中で腐ってしまわぬよう分野を変えるべきだと言っているのです。7年置きに変化することを強要されていれば逃げることはできないでしょうし、もし逃げることができたとしても私は研究を行うための条件をひとつ要求します。つまり、7年おきに然るべき定義の元で研究の分野を変えることです。あるいは、10年置きにマネージメントにあなたに変えろと強要する権利を与えることです。私が変化を主張するのは私が大まじめだからです。年老いたフェローにおこることというのは、かられは技術を押し進め、使い続けるということです。彼らは当時は正しかった方向に行進を続けるのですが、しかし世界は変わります。新しい方向というものがあるのです。しかし年老いたフェローは依然として古い道を行進し続けます。

自分のことを振り返ってみるとちょうど丸8年くらいほぼ同じ分野に取り組んできました。去年からちょっと離れた分野に携わるチャンスがあったのはとてもラッキーだったかもしれません。それで今日は職場で大掃除というか書庫の大移動があったので、これまでに積もりに積もった印刷だけして読んでいないようなものも含めた大量の論文や会議録の束をえいやと捨てました。よくもまぁここまで印刷したなぁというくらいものすごい数でしたが、捨てるにあたって軽く目を通しているうちに昔計算したデータなども出てきて当時の様子を思い出しました。今ならもっと効率的にやれたなぁという感想を持ちましたが、あの頃はあの頃で自分なりにやってのだたということを思い出しました。論文は基本的にネットでとれるものばかりですので、そうでないものはスキャナーでコピーをとっておきましたが、それ以外はきれいさっぱりと捨てることにしました。その分野での社内限りの文書なども大量にありましたが、大型のシュレッダーにかけました。これがなんともいえず爽快な気分になりました。長年の膿みがすっぽりととれたような感覚でした。というわけで7年目くらいを迎えている方にはシュレッダーをお使いすることをお進めします :)

ハミングの続きです。ハミングほどの大きな成功を残した人物でも、きれいさっぱりと以前のことを忘れるようにしていたようです。もちろん私はそんな大成功を収めた訳ではありませんし、これからもそのようなレベルの仕事ができるかはさておきですが、意識的に新しい分野に集中する環境をつくれたらよいなと考えています。

I deliberately refused to go on in that field. I wouldn’t even read papers to try to force myself to have a chance to do something else. I managed myself, which is what I’m preaching in this whole talk.

拙訳

私はわざとその分野を続けることを拒否しました。私は論文すら読まずに、他のことをやる機会をつくることを自分自身に課すようこころがけていました。私は自分自信を管理した訳ですが、それこそが私がこのトークの中で説いてきたことです。