フットワークの軽さ

最近これは大学ならではのフットワークの軽さという事例があったのでメモを残しておきたい。まだ研究発表前なので少しぼかして書くが、とあるデータのラベル付けをするというタスク。ラベルをつけるにあたって中国語を読める必要がある。そのことを思いついてから約10日間で十分なデータが揃った(900サンプル×4人分)。
 企業であれば自前で出来ないことは作業請負契約で他社に発注することが出来る。まず実績のある契約先をいくつか探して初回打ち合わせで作業概要の共有。次の打ち合わせで見積もり概算をもってきてもらった後、見積額などを元に契約先を選定。さらに次の打ち合わせ以降で作業詳細を詰めた後、契約処理など色々やることはあるだろう。契約先がそのようなタスクの経験があれば問題ないが、多くの場合は第三者発注になるのではないだろうか。そうなると更に時間はかかるし、当然コストもあがる。なお今回のタスクを実行するためにはラベル付けのためのウェブインタフェースの構築と中国人の雇用が必要であるが、両方を自前で出来てしまうという会社は少ないのではないだろうか。そしてそもそも作業請負契約を発注するにあたって上司への根回しと支出伺いのための社内稟議を忘れてはいけない。実はそれこそが一番大変だというケースも往々にしてあるのではないだろうか。特に結果が出るか出ないかよくわからない場合はなおさらだろうし、普通は自部門の業務と一致していなければ論外であろう。
 上記のような大変さがあることを良く知っているので、企業研究者時代だったら思いついてもまずやらなかった(やれなかった)と思うのだけど、今回は研究室で腕の立つ学生がインタフェースを AWS 上にさくっと作り、自分の講義を履修している中国人学生に声をかけて研究補助という形で作業をしてもらった。同じデータを4人に独立してラベル付けしてもらったが、かなり一致度が高かったので、精度が良いラベルが得られている。必要となった予算はおそらくオーダーが2つ違うし、なんといっても結果が出るまでの時間が格段に早い。思いついたらすぐに実現できるので、価値観の不一致による精神的疲労も一切無い。フットワークが軽いというのはこういうことかと思った次第。大学でなくてもベンチャー企業でも似たような環境かもしれないかな。クラウドソーシングを気軽に使える環境であればそういう手もあるだろう。