祇園の姉妹

今年最後の溝口健二作品です。いつものごとく上映開始30分くらい前に映画館に入り、予約席横の特等席をとりました。本作は今から70年ほど前に制作された映画です。溝口監督作品としてはかなり初期の作品ですが、雨月物語山椒大夫と並んで本作を代表作としてあげる人も多いようです。たしかに見応えがありました。山田五十鈴の演技は田中絹代に匹敵するほどの存在感で、思わずニヤっとされる場面が数多くありました。が、最後はなんか尻切れとんぼな感じがしました。69分の作品だったのですがもともとは90分ほどだった作品の一部が消失しているようなので、それも一因かもしれません。ある一人の監督の作品をまとめて見るというのもなかなか面白いもので、色々と調べてみると各映画に共通である女の人生と家族というモチーフは、溝口監督の人生を反映しているということがよくわかりました。単なるフェミニズムな映画ではなく、日本固有の湿っぽい価値観とそれを打破しようとする女性の不安定ながらもしたたかな生き様は拡大解釈すると戦前まだまだ古いしきたりに人生の選択肢を束縛されていた日本人の心の叫びが描かれているような気がしました。姉妹のまったく対比的な価値観が見所です。

溝口健二作品を楽しむにはこのサイトは欠かせません。 

ところで、本作品をはじめ私が見た溝口作品の多くは半世紀ほど前の作品なのですが、日本人のメンタリティって今でもそんなに変わってないのだろうなということを考えされました。和をもって尊しとなすというのは個人的に日本的な考えの最たるものだと思っているのですが、他人との関係や世間的な体裁を個人の価値観以上のものとしてとらえてしまう人って未だに結構多いんじゃないかと思います。また、自分はそんなことないと思いつつも少なくとも社会がそのような価値観で動いている以上、かなり影響を受けているんだなぁということが最近あらためて認識できた気がします。
[rakuten:guruguru2:10093507:detail]