中年の危機

最近本業に関係の無い変なことばかり書いてますが、まあ息抜きの一環です(と別に言い訳しなくてもいいのですが)。ちなみに本業の方は相変わらず遅々と関連論文読んだり、よそ様の手法の実装をやったりしてます。最近新しいプロジェクトに関われることになったのがとても嬉しいです。

本題は「中年の危機」というのが面白かったので、メモ代わりに少し書いておこうと思います。この直訳が学術的に正しいかはわかりませんが、元の単語は mid-life crisis というそうです。今日の今日まで知りませんでした。ざっくりとした意味は、平均46歳くらいのアメリカ人の男女の4人に一人程度がかかる症状で、年齢や更年期症状、家族(特に子供の成人)の変化をトリガーとして、これまでの自分の人生に疑念をもったり後悔して、新しいキャリアやパートナー(特に男性の場合は女性の閉経をトリガーとして)への強い願望を抱くというものです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mid-life_crisis

それでなぜこのキーワードに遭遇したかというと、下記のブログを読んだからだったりします。サバティカルの話なのですが、経験豊富で実力・実績ともに十分な教授がサバティカルをとって、敢えて新しいことにチャレンジしたり、多忙な生活の中では実現しえなかった深い思索に時間を投資し、新たなステップを築いていくという話なのですが、そのような大変なことにチャレンジするモチベーションや原動力の一つは上記の「中年の危機」もあるのではないかという解釈がとても面白いと思いました。上記のウィキペディアの記述によれば、興味深いことに「中年の危機」は日本ではほとんどみられない現象なのだそうです。ところで、サバティカルというのはアカデミアに限らず、様々な組織・あるいは個人においてどんどん推奨されてしかるべき制度だと思うのですが、仮にそのような要望が多くあったとしても、実際に実行に移すには様々な障壁があって、現実的ではないことが大半であるというのが現状だと思います。特に日本の社会事情ではそのような傾向が高いと思います。そこで、「中年の危機」を何らかの方法で意図的に引き起こし、社会的に一般的な現象にしてしまうという作戦はどんなもんでしょう。そうすれば新しい環境に身を置くことへの障壁が少しは和らぎ、結果としてサバティカル制度が充実したり、転職が柔軟にできるようになるのではないでしょうか。しかしこれはチキンエッグ問題かもしれません。米国のように転職や離婚が簡単にできる社会基盤や通念があるからこそ表に出てくる症状なのかもしれません。一方、日本人はそのような欲望があったとしても、現状ではリスクが高すぎるため、無意識の内にそれを押し殺してしまっているのかもしれません。

サバティカル:ボストン・アカデミアでの例 (ハーバード大学医学部留学・独立日記)
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-125.html

追記:
そういえば1999年にアカデミー賞の作品賞を受賞したアメリカン・ビューティーの評価がやたらに米国で高いのが不思議で(2000年集計のMovieLensデータでは第一位)、見た当時も一見幸せそうに見えるアメリカ人の家庭に根ざした闇の部分が云々というような解説は聞いていたのですが、どうにもピンと来ませんでした。今から考えるとこれはまさにケビン・スペイシーが「中年の危機」を演じていたわけですね。もちろん映画の主題はそれだけではないのでしょうが、なんとなく納得。いびきをかいて寝ている妻の横で自慰にふけったり、娘の友人に恋して筋トレを始めたり、中二病のような妄想にふけったり、誇張しているにせよかなり笑えたのですが、実のところ共感を覚える中年男性が多かったのでしょうね。